事件 File.2

 ※こちらの内容の多くは、別冊ジュリスト『租税法判例百選[第4版]』108頁(有斐閣,2005年)によっており、
   ここでいう著者とは、神田秀樹氏を指し、筆者とは、本論文筆者をさすことを補足しておく。

株式の評価損に関する一考察 〜ケンウッド事件を題材に〜

                 税理士  松田 昭子


 

1 事実の概要(筆者にて要約)[3]

  X株式会社(音響機器等の製造販売業)は、
昭和56521日〜昭和57520日の事業年度において、
米国子会社A社の株式総数の98.96%に当たる株式199400株を保有するに至り、
その簿価は1994万ドル(45億円超)であった。

本件株式は非上場・取引相場無。
A社は債務超過の状態にあり、
本件株式のうち、95000株は、
A社が上記事業年度初頭に行った
第一次増資の全部を取得したものである。

  X社は、上記事業年度の確定決算において、
A社の資産状態が著しく悪化し本件株式の価値が著しく低下したとして
1株当たり純資産価額がマイナス100強となった)として、
本件株式の簿価を零円に減額損金算入、
法人税申告に当たり欠損金の繰戻還付を請求。

Y税務署長は、この損金算入を否認。

Xは審査請求を経て
これらの処分の取り消しを求めた訴訟を起こした。

 ※A社は債務超過の状態

  56.5/21 A社株104400株保有

  6/30   第一次増資により95000株取得(計199400株保有)、簿価1994万ドル

  57.5/20 評価損損金算入、簿価0円

  7/20   第二次増資

  58.5/20 第三次増資

2 判旨(請求棄却)

@       「税法は担税力を適正に評価して公正な課税を実現することを目的とし、
・・・・商法や企業会計原則とは異なった規定をおくことはあり得る。
・・・従って、商法や企業会計原則の資産評価の定めと
33の規定とを同列に置いてその要件を比較するのは必ずしも当を得ない。」

A       「法人税法は原則として資産の評価損の損金算入を認めていないため、
損金算入を認めるべき特定の事実については限定的にすべき。」

「政令で認める特定事実は、
災害による著しい損傷等で回復の見込みが無い状態であると解される。」

「法人税法は評価益の益金算入を認めていないため、
仮に回復した場合、損金参入をしたにもかかわらず、
税務上益金ととらえることができず、
容易に利益操作・租税回避を認めるのと同様の結果となるため、
価額の著しい減少には固定的・回復の見込み無しが要求される。」

B       「Xは第一次増資時に払込金額程度の経済価値を認めていたといってよい。
さらに、第二次増資・第三次増資に応じており、
第二次増資については、第一次増資時において、
既に相当の蓋然性をもって予定されていたものと推認される。
また、本件評価損計上時には、計画は具体化していたといえるし、
第三次増資についても全く予定していなかったとは言い難い。
そうすると、Xは第一次増資の払込金額だけでなく、
第二次第三次増資の
払込金額程度の経済価値を認めていたといい得ないわけではなく、
Aの体質改善を意図していたものと考えられる。」

C       「本件株式のような長期的な保有を目的を前提とするものについては、
評価損の計上も長期的な見通しを考慮して行われるべきである」

「単に、金額のみに着目すると
資産状態の悪化が著しいとの見方もあるが、
Xにおいても十分に予測可能(予定された状態)ともいうべきであり、
以後、第一次増資の頃から相当の蓋然性をもって予定されていた
2次増資と相俟って(あいまって)
Aの資産状態は長期的な見通しに立つ限り、
改善される方向にあったといってよい。
しかも、XがAに対し
増資払込金額程度以上の経済価値を認めていたといってよい。」

「債務超過の状態が、
予測しがたい新しい事態によって発生したとは認めがたい(傍線筆者)」

 

? 検討事項

@       例外的に評価損計上を認めている要件に該当するか

・限定的に認められた要件に合致するか

・資産価値の減少が通常の予想を超えたものであるか

・回復の見込みがないと認められるものであったか

A       増資後の損金算入をどう捉えるか

・経済的価値

・資産状態の悪化が果たして予測不可能なものであったか

 

3 論点

@       企業会計原則・会社法と、法33との関係はいかなるものか

A       評価損の計上が認められる場合の条件(令68A,基通9-1-9(1)(2),9-1-7,9-11-14

B       赤字子会社の増資引受をした場合の税法上の取扱い(基通9-1-15

4 解説

@       法人税法では、資産の評価損の計上を、会社法や企業会計原則と異なり、
原則認めないとしながらも、
33により独自の規定を設けている。

Xは、法人税法等に認められる評価損の要件は、
商法や企業会計と同じものと解すべきだと主張したが、
判旨は
税法には公平な課税などの理念があるため
商法や企業会計と異なる取扱いを行う場合があり得る

とする。

税法も商法や企業会計と同じ取扱いをすべきという指摘もあるが、
税法の目的が商法や企業会計と異なるのは明らかであって
税法が独自の規定をおくことは問題ないと解される。

 

A       「その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、
その価額が著しく低下したこと(令68Aロ)」の解釈

    「資産状態の著しい悪化」とは、基通9-1-9(1)によると、
破産手続き開始決定等がない限り、
当該事業年度終了時の株式の純資産価額が
株式取得時の純資産価額のおおむね50%以上下回ることである。

    また、「価額の著しい低下」とは、基通9-1-7によると、
当該事業年度終了時の株式の価額が
その帳簿価額のおおむね50%相当額を下回り、
かつ近い将来その価額の回復が見込まれないことである。

    本件では、「資産状態悪化」の要件は満たされていたと考えられるが、
判旨は「回復見込性」について予測可能であったこと、
資産状態は長期的には改善される方向にあったという理由で、
「資産条件悪化」の要件を満たさないとした。

    ここで著者は、
「『資産状態悪化』要件は満たしていたが、
『回復見込性がない』という要件を満たしていなかった
という理由にすべきではないか」
と述べている。

    特に、XがAの増資の全額を引き受けたことが
「回復見込性がない」要件を満たさない判断の
決め手となりえたものと考えられる。

B       赤字子会を親会社が救済するための増資を引き受けた場合、
税法上の取扱いは困難である。
子会社株式の時価と引受価額との差額を贈与として取り扱う
ことも考えられる。
しかし、その税法上の取扱いは難問である。
現在の考え方では、その部分を「企業支配の対価」として把握することとし、
従って、そこの部分については
増資後相当の期間は評価損を認めないこととする考え方である(基通9-1-15)。
この考え方からすると、損金算入を認めなかった判旨は妥当とも考えられる。

 

 

7.判例評釈

 @ 武田昌輔氏の説(筆者にて要約)[4]

・形式的に実価が取得価額よりも低い場合の評価減計上の可否

  原告の主張:商法・企業会計原則と、法人税法を同列に扱うべき

  判決:原告主張は当を得ず、法人税法の趣旨等に照らして理解すべき

  →妥当である
     (ただし、立法論としてはこの点に差異を設ける積極的な理由は乏しい)

・回復可能かどうかの事実認定

  判断はその評価時点において必ずしも明確ではない。

  本件については昭和56年末頃には
   期間利益が生ずると見込まれたと推認できる。

    税法上評価減が厳格な事由に該当することについては、

    「その後仮に回復した場合、損金参入をしたにもかかわらず、
税務上益金ととらえることができず、
容易に利益操作・租税回避を認めるのと同様の結果となる。」

    ということであれば、
回復した場合には容易にその部分を取り戻せる仕組みを採る代わりに
弾力的に評価減を認めるということも一考に値する。

→評価減について洗替評価方式を担保として
しかるべき措置を講ずる必要もあろう。

・本件について

増資後直ちに評価減を行うことは、いかにもその増資時点において、
価値ありとして増資に応じたことからみて妥当でない。
その後(・・・)事態が悪化したという事態が生じたために
評価減を計上するというのであれば、
基通9-1-102にもあるように認められるべき。

従前から有していた旧株式については、
評価減を行う余地があり
これを調整したところでの評価減を認めるべきである。

 

 

A 岡本博美氏の説(筆者にて要約)[5]

基通9-1-12においては、
形式基準として増資払込直後においては
株式の評価損は認められないこととなっている。
赤字子会社に対して増資払込をすることは、
子会社再建を目的とするものであり、
当面業績の回復を期待するものであるから、
近い将来その価額の回復は見込まれないという要件には該当しない。
相当期間経過後業績が回復されず
むしろ悪化している場合には評価損計上は可能である。

 

B 平石雄一郎氏の説(筆者にて要約)[6]

    企業会計原則は、
評価益の反対計上を認めないとしているものではなく、
適正な財政状態の表示および利益の計算のためには、
その資産の時価が取得価額よりも著しく下落したときは、
取得価額まで回復されると認められるときを除き
時価をもって帳簿価額としなければならない、
つまり評価損を計上しなければならない、
とされ、強制的なものである。

法人税法においては、課税所得の計算上
収益および費用の額は別段の定めがあるものを除き
一般に公正妥当と認められる会計基準に従って計算されるものとされ、
解釈上も可能な限り企業会計および商法と一致させることが望ましいと解される。

基通上「近い将来その価額の回復が見込まれない場合」
という要件があり、
これは、商法および法人税法に共通する
「資産状態の著しい悪化」の解釈基準である。

つまり、評価損の計上は商法とは異なるものではない。

本件では、商法等とは別の次元での規定、解釈であるという前提を示している。

しかし、商法等から評価損の計上が義務付けられる場合は
税法も認めるという前提で、
本件がそのような場合に該当するかを検討する、と判断すべきである。

    そして、本件は本件株式の価値の具体的な内容については述べていない。
基通9-1-16は、純資産価値のほかに企業支配権があることを示している。

    増資前の段階で具体的救済策が固まっていなければ
評価損は認めるべきである。

 

C       神田秀樹氏の説(筆者にて要約)[7]

   赤字子会社を親会社が救済する場合、
子会社株式の時価と引受価額の差額を贈与として扱うことも考えられるが、
他方そのような行為は経済的合理性があるともいえる。

現在普及している考え方は、「企業支配の対価の額」とし、
評価損を認めないとするものであるため、判旨は妥当。

増資前の部分については、評価損を認めるべきだったともいえる。

 

. 検討(私見)

@       本件では、A社が既に債務超過の状態にあったにもかかわらず、
増資を引き受けたことが、損金算入に関して問題があったと考える。

    損金算入に関しては、基本通達9-1-12の解釈から妥当ではなく、
判旨は妥当であったと考える。

    ここで、疑問に感じるのが、上記6Bにある、
子会社株式の時価と引受価額との差額を贈与として取り扱う」という考え方である。

子会社救済のために、実際の経済的価値よりも高い価額での引受は、
贈与ないし寄付金または、子会社に対する貸付にあたらないのであろうか。

基本通達9-1-15の解釈からすると、株式の価額とすべきものであるが、
著者も述べているとおり、このような増資引受は経済的合理性も存在し、
税法上の取扱いが難しいものとなるのかもしれない。

 

A       増資がなかったとしたら、損金算入は認められるべきであったか

    まず、「資産状態悪化」に関しては、債務超過の事実から要件を満たしている。

    それでは、「回復の見込み」に関してはどうであるか。

A社は575月期以降第一次増資により、
資金調達と金利負担の軽減を図るとともに、積極的な在庫調整に努め、
米国市場の調査、需要供給の動向調査を徹底的に行うなどの諸施策を講じ、
その結果、昭和57年5月ころには企業体質改善の実があがり、
A社の昭和575月期の決算において、
ホームオーデイオ関係の売上高が
対前年度比106パーセント、
カーオーデイオ関係の売上が対前年度比159パーセントと増加し、
右両商品関係の合計たな卸商品が対前年度比約73パーセントと減少し、
通信機器関係は引き続き利益を計上するなど、
経営の安定化が見られるに至つた。  

X社はA社の親会社であり、
そういった事情を予測しうる立場に有ったのではないかと思われる。

従って、回復の見込みがないとは認めがたく、
この場合も損金算入は認められなかったのではないだろうか。

ただし、経営の安定化の根本には、
X社による増資引受が大きく貢献しているともみられるため、
一概に回復の見込みがあったとは考えがたい。

 

   以上のように、ケンウッド事件において、
その判示事項に全面的に反対する意見は存在せず、筆者も同様である。

株式の評価損の計上については、安定した解釈がある。

平成22年度の法人税法第61条の2O[8]の改正により、
清算・解散における子会社株式の消滅損は計上できないこととなった。

これは、同572[9]の改正による
グループ法人税制の制定により、
未処理欠損金額の引継ぎが可能になったことに伴う調整かと考えられる。

しかし、法人税法上同33条A、施行令6812号、基本通達9-1-11は残っているため、
評価損の計上は可能とされる。

つまり、清算・解散の際には、まず
100%子会社株式の評価損を計上し、
その後解散・清算すれば、その評価損部分は損金算入されることとなる。

以上のことから、評価損の計上については、
組織再編の際重要な要素となってくるため、
ここにおいてその解釈について改めて考察することは意義があるものと考える。

以上



[1] (資産の評価損の損金不算入等)

第三十三条  内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

 内国法人の有する資産につき、災害による著しい損傷により当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなつたことその他の政令で定める事実が生じた場合において、その内国法人が当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の当該資産の帳簿価額とその評価換えをした日の属する事業年度終了の時における当該資産の価額との差額に達するまでの金額は、前項の規定にかかわらず、その評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

[2] (資産の評価損が計上できる事実)

施行令68

法第三十三条第二項 (特定の事実が生じた場合の資産の評価損の損金算入)に規定する政令で定める事実は、物損等の事実(次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める事実であつて、当該事実が生じたことにより当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなつたものをいう。)及び法的整理の事実(更生手続における評定が行われることに準ずる特別の事実をいう。)とする。

一  棚卸資産 次に掲げる事実

イ 当該資産が災害により著しく損傷したこと。

ロ 当該資産が著しく陳腐化したこと。

ハ イ又はロに準ずる特別の事実

二  有価証券 次に掲げる事実

イ 第百十九条の十三第一号から第三号まで(売買目的有価証券の時価評価金額)に掲げる有価証券(第百十九条の二第二項第二号(有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法)に掲げる株式又は出資に該当するものを除く。)の価額が著しく低下したこと。

ロ イに規定する有価証券以外の有価証券について、その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下したこと。

ハ ロまでに準ずる特別の事実

(非上場株式の資産状態の判定)

(基通9-1-9(1)(2)

令第68条第1項第2号ロ《上場有価証券等以外の有価証券の評価損の計上ができる事実》に規定する「有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したこと」には、次に掲げる事実がこれに該当する。(昭52年直法2337」、昭54年直法231「三」、平11年課法29「十」、平12年課法27「十六」、平16年課法214「八」、平17年課法214「九」、平19年課法23「二十一」、平21年課法25「七」により改正)

(1) 当該有価証券を取得して相当の期間を経過した後に当該発行法人について次に掲げる事実が生じたこと。

イ 会社法の規定による特別清算開始の命令があったこと。

ロ 破産法の規定による破産手続開始の決定があったこと。

ハ 民事再生法の規定による再生手続開始の決定があったこと。

ニ 会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生手続開始の決定があったこと。

(2) 当該事業年度終了の日における当該有価証券の発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額が当該有価証券を取得した時の当該発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額に比しておおむね50%以上下回ることとなったこと。

() (2)の場合においては、次のことに留意する。

1 当該有価証券の取得が2回以上にわたって行われている場合又は当該発行法人が募集株式の発行等若しくは株式の併合等を行っている場合には、その取得又は募集株式の発行等若しくは株式の併合等があった都度、その増加又は減少した当該有価証券の数及びその取得又は募集株式の発行等若しくは株式の併合等の直前における1株又は1口当たりの純資産価額を加味して当該有価証券を取得した時の1株又は1口当たりの純資産価額を修正し、これに基づいてその比較を行う。

当該発行法人が債務超過の状態にあるため1株又は1口当たりの純資産価額が負(マイナス)であるときは、当該負の金額を基礎としてその比較を行う。

 

(上場有価証券等の著しい価額の低下の判定)

(基通達9-1-7

令第68条第1項第2号イ《上場有価証券等の評価損の計上ができる事実》に規定する「有価証券の価額が著しく低下したこと」とは、当該有価証券の当該事業年度終了の時における価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ることとなり、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれないことをいうものとする。(平12年課法27「十六」、平17年課法214「九」、平21年課法25「七」により改正)

()

1 同号イに規定する「第119条の131号から第3号までに掲げる有価証券」は、法第61条の31項第1号《売買目的有価証券の期末評価額》に規定する売買目的有価証券か否かは問わないことに留意する。

2 本文の回復可能性の判断は、過去の市場価格の推移、発行法人の業況等も踏まえ、当該事業年度終了の時に行うのであるから留意する。

 ※上場有価証券等以外については、9-1-119-1-7を準用する旨を規定

 

(上場有価証券等以外の有価証券の発行法人の資産状態の判定)

(基本通達9-1-9

令第68条第1項第2号ロ《上場有価証券等以外の有価証券の評価損の計上ができる事実》に規定する「有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したこと」には、次に掲げる事実がこれに該当する。(昭52年直 法2337」、昭54年直法231「三」、平11年課法29「十」、平12年課法27「十六」、平16年課法214「八」、平17年課法214「九」、平19年課法23「二十一」、平21年課法25「七」により改正)

(1) 当該有価証券を取得して相当の期間を経過した後に当該発行法人について次に掲げる事実が生じたこと。

イ 会社法の規定による特別清算開始の命令があったこと。

ロ 破産法の規定による破産手続開始の決定があったこと。

ハ 民事再生法の規定による再生手続開始の決定があったこと。

ニ 会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生手続開始の決定があったこと。

(2) 当該事業年度終了の日における当該有価証券の発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額が当該有価証券を取得した時の当該発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額に比しておおむね50%以上下回ることとなったこと。

() (2)の場合においては、次のことに留意する。

1 当該有価証券の取得が2回以上にわたって行われている場合又は当該発行法人が募集株式の発行等若しくは株式の併合等を行っている場合には、その取得又は募集株式の発行等若しくは株式の併合等があった都度、その増加又は減少した当該有価証券の数及びその取得又は募集株式の発行等若しくは株式の併合等の直前における1株又は1口当たりの純資産価額を加味して当該有価証券を取得した時の1株又は1口当たりの純資産価額を修正し、これに基づいてその比較を行う。

当該発行法人が債務超過の状態にあるため1株又は1口当たりの純資産価額が負(マイナス)であるときは、当該負の金額を基礎としてその比較を行う。

 

(増資払込後における株式の評価損)

(基本通達9-1-12

株式(出資を含む。以下9112において同じ。)を有している法人が当該株式の発行法人の増資に係る新株を引き受けて払込みをした場合には、仮に当該発行法人が増資の直前において債務超過の状態にあり、かつ、その増資後においてなお債務超過の状態が解消していないとしても、その増資後における当該発行法人の株式については令第68条第1項第2号ロ《上場有価証券等以外の有価証券の評価損の計上ができる事実》に掲げる事実はないものとする。ただし、その増資から相当の期間を経過した後において改めて当該事実が生じたと認められる場合には、この限りでない。(昭54年直法231「三」により追加、平12年課法27「十六」、平17年課法214「九」、平21年課法25「七」により改正)

 

(企業支配株式の対価)

(基本通達9-1-15

   法人の有する企業支配株式等(令第119条の22項第2号《企業支配株式等の意義》に規定する株式又は出資をいう。以下9115において同じ。)の取得がその企業支配株式等の発行法人の企業支配をするためにされたものと認められるときは、当該企業支配株式等の価額は、当該株式等の通常の価額に企業支配に係る対価の額を加算した金額とする。(昭55年直法28「三十一」、平12年課法27「十六」により改正)

 

[3] 別冊ジュリスト『租税法判例百選[4]108頁(有斐閣,2005年)。

[4] 判時 1346号 186

[5] 「法人税精選重要判例詳解」 181頁(税務経理協会)

[6] ジュリスト 960 90頁 (有斐閣,1990年)

[7] 別冊ジュリスト『租税法判例百選[4]108頁(有斐閣,2005年)

[8] (有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入)

第六十一条の二  

内国法人が有価証券の譲渡をした場合には、その譲渡に係る譲渡利益額(第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。)又は譲渡損失額(同号に掲げる金額が第一号に掲げる金額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。)は、第六十二条から第六十二条の五まで(合併等による資産の譲渡)の規定の適用がある場合を除き、その譲渡に係る契約をした日(その譲渡が剰余金の配当その他の財務省令で定める事由によるものである場合には、当該剰余金の配当の効力が生ずる日その他の財務省令で定める日)の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。

 その有価証券の譲渡に係る対価の額(第二十四条第一項(配当等の額とみなす金額)の規定により第二十三条第一項第一号(受取配当等の益金不算入)に掲げる金額とみなされる金額がある場合には、そのみなされる金額に相当する金額を控除した金額)

 その有価証券の譲渡に係る原価の額(その有価証券についてその内国法人が選定した一単位当たりの帳簿価額の算出の方法により算出した金額(算出の方法を選定しなかつた場合又は選定した方法により算出しなかつた場合には、算出の方法のうち政令で定める方法により算出した金額)にその譲渡をした有価証券の数を乗じて計算した金額をいう。)

  ・・・・・略・・・・・

16  内国法人が、所有株式(当該内国法人が有していた株式をいう。)を発行した他の内国法人(当該内国法人との間に完全支配関係があるものに限る。)の第二十四条第一項各号に掲げる事由(第二項の規定の適用がある合併及び第四項に規定する金銭等不交付分割型分割を除く。)により金銭その他の資産の交付を受けた場合(当該他の内国法人の同条第一項第三号に規定する資本の払戻し若しくは解散による残余財産の一部の分配又は口数の定めがない出資についての出資の払戻しに係るものである場合にあつては、その交付を受けた時において当該所有株式を有する場合に限る。)又は当該事由により当該他の内国法人の株式を有しないこととなつた場合(当該他の内国法人の残余財産の分配を受けないことが確定した場合を含む。)における第一項の規定の適用については、同項第一号に掲げる金額は、同項第二号に掲げる金額(第四項、次項又は第十八項の規定の適用がある場合には、これらの規定により同号に掲げる金額とされる金額)に相当する金額とする。

[9] (青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)

第五十七条  内国法人の各事業年度開始の日前九年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額(この項の規定により当該各事業年度前の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されたもの及び第八十条(欠損金の繰戻しによる還付)の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となつたものを除く。)がある場合には、当該欠損金額に相当する金額は、当該各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。ただし、当該欠損金額に相当する金額が当該欠損金額につき本文の規定を適用せず、かつ、第五十九条第二項(会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入)(同項第三号に掲げる場合に該当する場合を除く。)、同条第三項及び第六十二条の五第五項(現物分配による資産の譲渡)の規定を適用しないものとして計算した場合における当該各事業年度の所得の金額の百分の八十に相当する金額(当該欠損金額の生じた事業年度前の事業年度において生じた欠損金額に相当する金額で本文又は第五十八条第一項(青色申告書を提出しなかつた事業年度の災害による損失金の繰越し)の規定により当該各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものがある場合には、当該損金の額に算入される金額を控除した金額)を超える場合は、その超える部分の金額については、この限りでない。

 前項の内国法人を合併法人とする適格合併が行われた場合又は当該内国法人との間に完全支配関係(当該内国法人による完全支配関係又は第二条第十二号の七の六(定義)に規定する相互の関係に限る。)がある他の内国法人で当該内国法人が発行済株式若しくは出資の全部若しくは一部を有するものの残余財産が確定した場合において、当該適格合併に係る被合併法人又は当該他の内国法人(以下この項において「被合併法人等」という。)の当該適格合併の日前九年以内に開始し、又は当該残余財産の確定の日の翌日前九年以内に開始した各事業年度(以下この項及び次項において「前九年内事業年度」という。)において生じた欠損金額(当該被合併法人等が当該欠損金額(この項又は第六項の規定により当該被合併法人等の欠損金額とみなされたものを含み、第四項、第五項又は第九項の規定によりないものとされたものを除く。次項及び第八項において同じ。)の生じた前九年内事業年度について青色申告書である確定申告書を提出していることその他の政令で定める要件を満たしている場合における当該欠損金額に限るものとし、前項の規定により当該被合併法人等の前九年内事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されたもの及び第八十条の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となつたものを除く。以下この項において「未処理欠損金額」という。)があるときは、当該内国法人の当該適格合併の日の属する事業年度又は当該残余財産の確定の日の翌日の属する事業年度(以下この項において「合併等事業年度」という。)以後の各事業年度における前項の規定の適用については、当該前九年内事業年度において生じた未処理欠損金額(当該他の内国法人に株主等が二以上ある場合には、当該未処理欠損金額を当該他の内国法人の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額で除し、これに当該内国法人の有する当該他の内国法人の株式又は出資の数又は金額を乗じて計算した金額)は、それぞれ当該未処理欠損金額の生じた前九年内事業年度開始の日の属する当該内国法人の各事業年度(当該内国法人の合併等事業年度開始の日以後に開始した当該被合併法人等の当該前九年内事業年度において生じた未処理欠損金額にあつては、当該合併等事業年度の前事業年度)において生じた欠損金額とみなす。

 

  判時・・・・・判例時報





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