はじめに



債務超過法人の事業再建のための救済策としては、
債権者による債権放棄のほか、
その債務超過法人の行う増資の引受け
(債権の株式への転換・債務の株式化)がある。
救済策としての増資引受けについては、
親子会社間といった、特殊関係にある法人間で行われることが多く、
また、こういった増資引受けについては
通常の価額に比して高額で行われることがほとんどである。

このような増資引受けをした場合には、
その差額について、
経済的な利益の供与として寄付金課税も考えられるが、
増資は本来課税の対象とされない資本等取引であり、
また、親会社が合理的な理由のもと
子会社救済のために行った場合は、
その差額は企業支配対価の額とされ、
寄付金の額に含まないとされている。

しかし、この制度を利用して、
債権者である親会社が
債務超過子会社の増資引受けをして寄付金課税を免れ、
子会社はその増資払込金銭をもって
親会社に債務を返済、
親会社はその後子会社株式を時価で譲渡し、
増資払込金額で評価した子会社株式と譲渡額との差額を
譲渡損として損金算入する事例が起きている。

この方法によると、
個々の取引に違法性はないが、
債務超過に陥った子会社に対する
債権についての評価切下げである貸倒損失を計上したことと
同様の効果が得られることになる。

そこで、こういった場合の高価増資引受けについて、
判決は
その高価引受けをした払込金額と時価との差額について、
寄付金課税の適法性を容認している。

しかし、債務超過に陥った子会社に対する増資引受けについては、
その事業再建のために有用な手法であり、
そういった行為について寄付金課税がされることは、
今後の事業再建の足かせになるのではないかと、
疑問を投げかける意見も少なくない。

また、増資引受けは、資本等取引に該当し、
本来損益を生ずるものではないにもかかわらず、
法人税法における
損金の額の別段の定めとしての寄付金課税を容認しており、
法人税法上の取扱いと
裁判所の判断に矛盾があるともいえる。

筆者は
明らかな租税回避行為に対する課税について異論はない。

しかし、債務の株式化は
事業再生の重要な手法であるため
課税されるまでの経緯及び根拠を明らかにし
その妥当性について、検討する必要があると考える。

会社法の改正でもみられるように、
企業再生、企業組織再編成等が活発化している今日、
経営不振企業の財務再構築の有力な手法である
債務の株式化・債権者による増資引受けは、
今後もさらに活発化していくと予想され、
法人税法の本来の目的や体系との整合性という観点から
その解釈について検討していくことは、意義が大きいと考える。

そこで、本論文では、
事業再建のための債権の株式への転換について、
子会社株式の高価増資引受けと
寄付金課税の妥当性を軸に検討することを目的とするものとする。

検討に当たっては、
債務の株式化の法人税法の取扱いに関して、
過去の裁判例をもとに
子会社株式の高価引受けを寄付金課税することについての
経緯及びその根拠を軸に研究し、
事業再建と法人税法上の解釈との理論的齟齬に関する解決策として、
税制改正が
どのようになされてきており、どういった意義をもっているかを
考察していくことを目的とする



 → DESの法体系 








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